8月15日が終戦記念日だということは知っているでしょう。しかし、今から56年前の一九四五年(昭和20年)の8月15日を体験した者にとっては、未曾有の出来事だったのです。当時私は、学童でしたが、戦時体制下では学童といえども、塩田作業や航空機の燃料となる、松の木から取る松根油の採取、農作業などに動員され、小さい体でお国のために必死で働いていたのです。

 終戦となり、学校に戻りましたが、軍国主義時の教科書は、ほとんどの箇所が指示されるがままに、生徒自身の手で墨で黒く消されていて、学ぶべき教科書はないに等しく、先生も生徒も放心状態でした。

 そうしたある日、先生が一冊の本を読み聞かせてくれました。それは、ユゴーの「レ・ミゼラブル」でした。朗読する先生の声が、シーンとした教室内に響き、生徒はじっと聞き入って、授業時間が終わっても誰も立ち上がりませんでした。感動して動けなかったのです。

 このようにして、デュマの「モンテクリフト伯」、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」と、世界の名作といわれる物語が、次々と読み進められました。どれもが新鮮な響きでした。物語を通して自分の夢を語り、みんなが読書にのめり込んでいきました。

 現代は豊かで、IT時代で、何でもあります。携帯電話、パソコン、TVゲームもいいでしょう。塾通いに時間が取れられることもわかっています。でも、一日に30分でもいいから、本を読んで欲しいのです。

 年を重ねると、30代は一週間が40代は1カ月がすぐ流れ、60代は10年が束になって飛んでいくのです。

 まさかと思ったらご両親やお年寄りに聞いてご覧なさい。さらに、大事なことは少年少女時代の記憶は、いつまでも残るものなのです。今では、だれでも、いつでも、どこででも本が読める平和な日本です。本を読み、今を大切にして、精一杯生きて欲しいのです。