お手紙をありがとう。一通一通の手紙から伝わってくるものは、励ましや優しい配慮、若い私たちへの期待、それから何よりうれしいのは、私たちへの愛情です。どんな時代であっても、一番変わらなかったものは人間関係の在り方ではないでしょうか。築きにくく、それでいて築きあげたときに達成感や満足感のあるもの。それさえをも、私たちはあなた方から学ぶもののひとつとして大切にしなければならないと思います。
 お年寄り、というのは不思議な存在です。今、このときを一緒に生きているのに、私たちが体験したことのない、しかも今では考えられないような生活や思想にあふれた「昔」を生き、語ってくれる人たち。そして、その言葉には何か言うことを素直に受け入れさせる不思議な力があることを、ご存知でしたか。物を大切にする心や、人と人との関わり、戦争のこと、生命の大切さと重み、それらを語ってくれるとき、その言葉にはそれだけの長い年月と目まぐるしく移り変わる社会を生きてきた重みがあるのです。
 私たち子どもの世代の時代と言われる二十一世紀が幕を開けました。世代の違いはあるものの、私たちは二十世紀を一緒にまたいだ「仲間」です。それに、「二十一世紀は任せた」とおっしゃっても、若者だけで日本は絶対たちゆかないし、私たちにはまだまだ年上の方たちの訓戒や支えが必要です。寄る年波なんか押し戻して、まだまだ青いものに日本は任せられないな、若いものには負けないぞ、くらいの気概をもって、ずっとずっと長生きしてください。新しい世紀も一緒に生きていきたい、それが私の願いです。